• 概要

今回、心血管再生医学寄附講座 内藤篤彦助教、循環器内科学講座 小室一成教授らが中心となり、加齢によって血中に増加し、老化を促進する分子を同定しました。老化は様々な疾患の原因になることから、本研究で同定した分子を標的にすることで老化に伴う様々な疾患の予防・治療につながることが期待されます。本論文はCell誌に掲載されました。

  • 研究の背景

スタンフォード大学のグループは、2005年に若いマウスと年寄りマウスの血液を循環させるパラビオーシス手術(図1)を行うことで、若いマウスに年寄りマウスの血液が入り若いマウスが老化すること、逆に年寄りマウスに若いマウスの血液が入り年寄りマウスが若返ることを報告しました(図1)。

さらに2007年に同グループは、老化に関わる分子が、細胞の中でWnt/b-cateninシグナルを活性化することを発表しました。Wnt/b-cateninシグナル(※1、図2)は、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが育つ際や、大人の体の中にある幹細胞の機能を維持する際に重要な役割を果たすばかりでなく、シグナルが多すぎたり少なすぎたりする結果、ガンや骨粗しょう症、心不全など、様々な病気の原因になることが報告されています。Wnt/b-cateninシグナルを活性化するWntタンパク質は水をはじく性質が高いため、血中に存在する可能性は低いことから、私たちは血中に存在し、Wnt/b-cateninシグナルを活性化する分子の同定を試みました。

  • 研究内容

Wnt受容体に結合し、Wnt/b-cateninシグナルを活性化する血中の分子として、免疫反応に重要な役割を担う補体(※2、図3)の一種であるC1qを同定しました。C1qは高齢マウスや心不全マウスの血中で増加しており、C1r,sを介して、Wnt共受容体であるLRP6を切断することでWnt/b-cateninシグナルを活性化しました(図3)。

スタンフォード大学の報告にのっとり、筋肉に傷をつけた後の再生能を指標として老化を判定したところ、C1qにより若いマウスの骨格筋の再生能が低下して老化すること、逆にC1qによるWnt/b-cateninシグナル活性化を抑制することで、年寄りマウスの再生能が改善して若返ることを示しました(図4)。

  • 研究成果が社会に与える影響(研究成果の意義)

年をとると、老化が進み、ガン、心不全、動脈硬化、糖尿病、腎臓病、呼吸器疾患など種々の疾患を発症することは知られていますが、その分子機序はほとんど不明です。本研究では、老化による疾患の発症に、細菌やウイルスによる感染から身を守るために働く『免疫反応』に重大な役割を果たす物質である補体分子C1qが関与している可能性を示しました(図5)。

我々はすでにC1qによるWnt/b-cateninシグナルの活性化が、心不全や動脈硬化に関与している予備的結果を得ています。したがって、本研究ではC1qによるWnt/b-cateninシグナルの活性化を抑制することで、老化に伴って発症する多くの疾患を予防することができる可能性が示されました。

  • 特記事項

本研究は、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(S))、科学技術振興機構CRESTのサポートにより、大阪大学が中心となり、千葉大学、北海道大学、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン、米国ボストン大学との共同で行いました。

 

  • 本件に関する問い合わせ先

お問い合わせフォーム( http://www.cvrm.med.osaka-u.ac.jp/contact )

もしくは、

内藤 篤彦  大阪大学大学院医学系研究科 心血管再生学寄附講座 寄附講座助教

e-Mail: at-naito@cardiology。med。osaka-u。ac。jp

小室 一成  大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学講座 教授

e-Mail:  komuro-tky@umin。ac。jp

まで。

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